彼岸会とは、春分・秋分の日を中心に前後一週間に営まれる行事のことですが、元来、彼岸とは至彼岸というのが本当です。生死の苦しみに迷うこの娑婆世界を此岸といい、悟りの世界である寂光浄土を彼岸といいますが、仏様は此の岸から彼の岸に渡る方法として、六度行という六つの修行を教えられました。
布施、持戒、忍辱、精進、禅定、智慧の六つの修行を成就することを至彼岸というのです。ですから、自らが六度行を実践し、自分はもとより、亡き方も祈るものが彼岸というもので、それが時代を経て、亡き方の彼岸を祈る回向のみの風習が残ったようです。
回向とは回し向かわすと書きますが、自分が積んだ功徳という幸せを御本尊にお願いをして、他の人に回し向かわす修行のことをいいます。故人には、今生の物ではなく、自分自身が積んだ功徳のみが届きます。門祖聖人は「妙法蓮華経を信ずる処に六度の義味を備ふるなり」(本門弘経抄)と仰せで、上行所伝の御題目の御信心に励むことで、六度行の功徳が積めることをお教えです。
すなわち、御題目口唱やお寺やお講参詣、お教化などの日常の信行に励んでいるからこそ功徳が積めるのです。また、法華経の如来神力品には、御題目のお塔婆を建立することは大きな功徳が積めるとも説かれております。
当宗では、常盆・常彼岸といって常日頃から、ご先祖のお陰を常に感じ、信心修行に励み、御塔婆を建立しご回向をしており、そういう意味で本来の彼岸への修行を純粋に守っているのですが、このお彼岸の時期には、重ねて懇ろにご回向をしております。
私達佛立信徒は、お彼岸の時には、この命があるのもご先祖のお陰という心を強めて、より信行に励み、数多くの御塔婆をご先祖が眠るお墓や納骨堂に建立させていただくことが大切です。そして、功徳という幸せを御題目の声に乗せてご先祖にお届けさせていただきましょう。(K.A)
乗泉寺通信 平成24年9月号より