人の和合ほどむづかしいものはありません。それだけに、この点に成功したら、事業でも九十九%成功したと見て差支えないでしょう。それほど大事なものは、人の和合ということです。
どんなに世の中のことが便利になって、所謂、物質文明が進んでも、結局人間あっての文化ですから人間同志が、いがみ合い、にくみ合い、軽視し合っていたら、決して仕合わせを感じることは出来ません。最後は人間のむつみ合いが実現しなければ本当の文化とは云えないでしよう。
それ程大事な人の和ということに割合、関心のない方が多いので困ります。金さえあれば人なんかどうでもよいと考えたり、自分の地位さえ確定すれば人を泣かせても、幸福がえられると簡単に考えてはいけません。お金や、地位のためにチヤホヤされても、真の幸福は味えるものではありません。
この問題をもう少し具体的に考えて、どんな心構えで人とつき合ったらよいかというと、結局は、平凡なことですが、相手の立場に立って考えてあげる。その人の身になって行動してあげることが和合する根本の心構えです。恐らく世界中で一番大事なものは誰よりも自分ですから、自然と、自分中心の考え方が長い間にこり固まって習慣化してしっているのですから仲々、人の立場に立って行動することが骨です。
けれど、その為必ず、どこかで他と衝突があり、結局はみんなお互いにみじめさを感じているのですから、思いきってその逆をやってみることが幸福への第一歩になるようです。
信心をしないひとには自我中心の殻から仲々抜け出ることはむづかしいのですが、信者ならキットそれが出来るのです。尽してやった相手からその報いを期待しないで、御法様から、その御かえしが頂けることを信じて、一衆生に仕えることが和合への第一歩となるのです。
昭和34年9月発行 乗泉寺通信より