御奉公日記

先日、お教化した妹から電話があって、「御本尊をまつってから社員が次々と辞めていくし、入信したけれどさっぱり良い事がない」と文句を言ってきたので、「そんなに簡単に何もかも良くなるものではない。お寺参詣や家のお看経など力を入れて、まず功徳を積む事が大切よ」とすすめたところ、「姉さんみたいに暇人じゃないから、そんなことできない」と頭からはねつけられたので腹が立ち、「お前のような勝手者は信心する資格がない」と叱ったら、妹は「それなら止める」と言い出してケンカになってしまった。

「どうも妹はわからずやで困る」と愚痴をこぼしていたので、私は「それはまずいですね。しかし本当はあなたにも責任がありますね」と言うと、ケゲンな顔をしているので、「教化は相手のためとは一応は言えるけれど、実は教化親の御利益なのですよ。教化子を育てる事で、知らぬ間に自身に徳がつくというありがたい事なのだから、どんな事を言われても、何とかして御利益をいただかせようと親切を尽くせば、必ず共に御利益がいただけるものですよ」と日頃御法門で教えていただいている信心の筋を話してあげた。

 すると一週間ほどして、お礼を言って来た。「こちらから先日のケンカの詫びを言って、会社も思うようにならなくて大変だろうが、それがうき世というものだから、くよくよせずに都合のつく時にはお寺にご祈願に来なさい。姉さんも一緒にご祈願させてもらうよ」とこちらから勇気付けるように話したら、「姉さん、よろしく頼む」としおらしい態度に変わったのでびっくりした。その翌々日に妹の方から電話がかかり、「以前に会社を辞めた人で、とても有能だった人に街でバッタリ出会った。話しているうちに、もう一度妹の会社に戻って働く事になった様だ。その他にも良い事があって、姉さんのおかげで御利益をいただいた」と言う。「こちらが改良したら、たちまち御利益があらわれるとは、何ともありがたい」と喜んでいた。至らない私の折伏を聞いてくれて我が事のようにありがたくて、うれしかった。

 (乗泉寺通信 昭和44年6月発行)


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