京都という町は、戦時中も他の街に比べて戦災の被害が少なかった地域です。ですから、街を歩いてもそこかしこに、古い洋館や町屋づくりの民家を見かけます。
随一の繁華街、四条河原町からほど近い、麩屋町通りに長松寺というお寺があります。
ここがまさしく典型的な町屋づくりで、とてもお寺とは思えないアットホームな雰囲気なのです。
それもそのはず、こちらは佛立開導日扇聖人が明治16年から、御遷化になられる23年まで過ごされた個人のお宅だからです。
玄関を開けると、この街特有のうなぎの寝床。奥までまっすぐに土間が続き、その横にはかまどがあり、明り取りの窓からは淡い光が差し込みます。本堂に当たる座敷の外は坪庭に面していて、表通りの喧噪が嘘のように静かなたたずまいです。
夏のあいだは、すだれと簀戸(すど)がしつらえられ、きびしい暑さを和らげてくれます。絵のお好きな方ならば、上村松園描く古都の美意識、とでもご説明すればおわかりいただけるでしょうか。
ともかく、開導聖人御在世当時のぬくもりを残し、江戸から明治の面影をほぼそのままに伝えている珍しいお寺です。
よく知られているように、開導聖人は仏教改革者としてだけでなく、書家、画家、またデザイナーとしても特異な才能をお持ちの方でした。このお寺の御戒壇も開導聖人のデザインされたもので、現在はごく一般的になっていますが、埃よけのガラスをつけた御戒壇は当時としてはとても実利的、画期的なものだったようです。
またこちらには開導聖人お手回りの品々も保管されています。猫の形をした手あぶりや、鳥の姿をあしらったすずり箱など、いずれも温かみのあるユニークなもので、洒脱なお人柄をしのばせる品々です。
もう一つ面白いものに、携帯用の法鼓(お看経中に打つ太鼓)があります。この法鼓を打ちながら、題目行列で御講席から御講席を移動したと伝えられています。騒音の苦情などない時代の、何とものどかな光景ですが、それと共に当時の佛立宗の熱意と活気とが伝わるエピソードでもあります。
いずれにしましても、このお寺で開導聖人が様々な御指南をおしたためになり、それが現在の私達の信心の指針となっている事を思えば、感慨もひとしおです。
本堂信者席の上には、御教歌がしたためられた扁額が掲げられています。
「草がくれ ながるゝ水も せかれては 世にありがほに 音たてぬめり」
草に隠れるような細く小さな水の流れも、何かにせき止められると、ここに小さくても小川の存在があるぞ、とばかりに音をたてるようになるようだ、という意味になります。
せかれては → 人生に待ち受ける様々な障害に邪魔されても
世にありがほに → 世の中に恥じることなく堂々と
音 たてぬめり → 菩薩としての生き方を貫いていけばよい
ただの風景を謳っているようでも、その奥には「この先も様々な困難にぶつかるだろうが、み仏の御教え通り正直にまっすぐに進んでいこう」という開導聖人の深い洞察があり、人の生きていく姿に置き換える事ができるようです。
この扁額を拝見しながら、開導聖人から無言の励ましをいただいたような気がして、改めて教務として生きていく決意を新たにした次第です。
※この記事を書くにあたって、長松寺の皆様よりいろいろなお話を伺いました。ありがとうございました。
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