ことばの力

突然ですが、「言語聴覚士」という仕事を知っていますか?

言語聴覚士(ST:Speech Therapist)とは、病気や事故などが原因で「ことば」や「きこえ」に障害を持った人(子ども)に検査や訓練、指導、助言などを行い、機能回復を目指す専門職です。理学療法士(PT:Physical Therapist)や作業療法士(OT:Occupational Therapist)などと一緒に、病院や施設にてリハビリテーションに携わっています。

私は現在、この「言語聴覚士」を目指し、2年前から専門学校に通っており、今年3月で卒業を迎えます。この2年間、言葉や聞こえに関わる様々な分野について勉強してきました。さらに、臨床実習では、病院にて実際の患者様と接する機会もありました。こうした勉強や実習を通じて、“ことばが与える人への影響力”は計り知れないものだと痛感しました。

「ことば」は使い方一つで、良い方向にも悪い方向にも進んでしまいます。例えば、何か大きな壁にぶつかった時に、家族や友人、先輩、先生、会社の上司から励ましのことばやアドバイスをもらうと、新たな力が湧き、壁を乗り越える言動力となります。逆に、その励ましが本人を追いつめてしまい、心の病となり、さらには自分の命を自分自身で絶つことも少なくありません。また、「オレオレ詐欺」「訪問販売」「悪徳商法」などでは、巧みに「ことば」を使って、相手からお金を騙し取りますが、これは「ことば」の誤った使用方法とも言えるでしょう。

そして、ことばの「イントネーション」についても同様のことが言えます。大衆の前での演説や発表の際、抑揚のあるはっきりとした話し方と、平坦で抑揚のない話し方では、聴衆が感じる発表者に対する印象はまったく違います。さらに、相手からの質問に対して、何気なく答えたつもりが、相手を傷付けてしまうことがよくあります。これも、ことばのイントネーションが要因の一つと考えます。何気ない一言が、相手に良くないイメージを与えてしまい、とんでもない勘違いを生み出してしまうのです。

「ことば」は、人間固有のコミュニケーション手段であり、他の哺乳動物には決してみることのできない能力です。それだけ「ことば」は絶大な力を持っているのだと思います。私は、これから「ことば」や「きこえ」に障害を負い、今まで通りにコミュニケーションが取ることが困難になった方々のリハビリテーションに携わっていきます(国家試験が合格していればの話ですが・・)。患者様と接する時は、当然のことですが、「ことば」の使い方、話し方には十分注意していきますが、自分の身近にいる友人や家族や先輩、後輩などへの配慮も忘れてはいけないと思います。

相手が、どのような性格なのか、今どんな心理状況なのかを十分に吟味した上で、より適切な「ことば」の使い方、話し方を選択できるように努力しなければと、最近感じています・・・。

青年会Y.K

※管理者注…震災前にいただいておりました原稿です。掲載が遅くなりまして申し訳ありません。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください